この3月、尖東にあるもう一軒のインターコンチネンタルであるグランドスタンフォード地下に、イギリスのセレブシェフ、テオ・ランダルさんが初の香港店をオープンして、早速人気を博しています。
その名もTheo Mistral by Theo Randall! オープン時に香港に来ていたテオさんに、じっくりお話を聞く機会がありました。とてもフレンドリーで、ハキハキと分かりやすくお話してくださるテオさん。
「香港に到着した翌日は一日、新界の農家を回りました。ほうれん草、ズッキーニ、アーティチョーク、ポルチーニなど、思った以上に高品質の野菜が育てられていることが嬉しい驚きでした!さっそくこのレストランのために野菜を作ってもらうことになりました」とテオさん。
メニューの半分はロンドンでも出している代表的な料理、残りの半分は香港の嗜好に合わせたオリジナルだそう。
「香港の方は、食卓を囲んで大皿をシェアすることを好みますし、シーフードがとにかく大好き。その点を考慮し、ローカルの食材も取り入れて、香港オリジナルメニューを作り上げました」
テオさんの長年の代表的な料理の一つが、Cappelletti de Vitello。
パスタの中には、5時間煮込んだ子牛のすね肉とパンチェッタ(イタリアの塩漬け肉)、セロリ、ニンジン、タイムなどがくるまれていて、これは美味しい! パスタと餃子の親戚関係を感じさせる一品です(笑)。
丁寧に作られた具とともに、自家製パスタも愛情たっぷり。実は1kgの小麦粉辺り、全卵4個、黄身14個分と、たっぷり黄身が使われているのだそう。
と、説明してくれながら、つい近くにあったナプキンをカペレッティ型にたたんでしまうテオさん(笑)。長年作っているメニューだけのことがあります。
一方で、ロブスターの芳香に包まれるLinguine con Aragostaは、香港だけのメニューです。ベースになっているトマトソースには、テオさんが気に入ったローカルトマトに、イタリア産のSan Marzanoトマトを使ったパサータ(未調理のトマトピューレ)を加えてバランスを取り、ガーリックとバジルを加えて何時間もかけて煮ているのだそう。さらにボストン産ロブスターやオリーブオイル、チリ、パセリなどを加えて仕上げたソース、食欲が湧いてしまいます。
モッチモチの生地がたまらないピザは早速評判。これがなんと意外にも、ロンドン店にはなくて香港のみのメニューなのだそう。それにしては何とこなれた美味しさ!?と追求したところ、香港を任されているシェフのファビオさんはナポリ出身で、このピザ生地はファビオさん秘蔵のレシピをベースにテオさんと一緒に開発したのだとか。水、小麦粉、オリーブオイルの調合がすべて適切で、こね方も絶妙だからこそ、この食感が出せるのです。
香港ローカル食材を柔軟に取り入れるテオさんですが、「これはイタリア製じゃなきゃダメ!」とこだわるのが、パスタに使う小麦粉やオリーブオイル。そんな食材の使い分けが味を保つキーになっています。
このピザ「レッジーナ」には、パルマ産プロシュートに、トマト、オレガノ、ロケットなどの新鮮野菜とハーブがたっぷり。
こちらもシーフード大好きな香港マーケット向けのシチュー。ムール貝やアサリ、ボストンロブスター、海老、ホタテ貝、鯛など山盛りのシーフードの風味がしっかり引き出されつつ、さらりと軽くて優しい味に仕上げています。テオさん曰く、ロンドンで似たものを出したことはあるけれども、それは遙かに濃い味だったとか。新鮮素材を丁寧に調理するポリシーはそのまま、食材のタイプや味付けの濃淡を地元の好みに合わせるというのがテオさん流。
とはいえ、すべて好みに合わせるだけではなく、ひと味違うものも試して欲しいとの思いから取り入れたのが、ヨーロッパではおなじみの食材Guinea Fowlことホロホロ鳥のロースト。ホロホロ鳥をパンの上の載せて、マスカポルネとレモンジュース、プロシュートを皮の下に入れてローストするので、肉汁やうま味がすべてパンに染みこむという二重の美味しさが楽しめます。
センス良く丁寧に美味しくまとめられた料理が揃っていますよね! そして最後はやっぱりテオさん名物のレモンタルト! イタリア・アマルフィ産のレモン7個分の果汁が1つのタルトに使われているのだそう!
「匂い嗅いでみて」とテオさんに言われてレモンを鼻に近づけると、なんとも爽やかな甘い香りがします。ノーワックスなので2週間しかもたないけれども、フレッシュさが際立ち、酸っぱさが減り、ジュースがたっぷり出せるのだとか。このレモンがタルトだけでなく、さまざまな料理に使われているほか、テーブルにもこうして飾られていました。目から香りからビタミンC吸収!できそうです(笑)。
イギリス人ながら、アーティスト一家に育ち、毎年イタリアでホリデーを過ごすうちに、すっかり「魂はイタリアン」と言うほど、子どもの頃からイタリアの食に魅せられていたというテオさん。
食材へのリスペクトが彼の料理哲学。
「たとえば素晴らしいほうれん草があったら、茹でて、オリーブオイルとレモンスライスで和えたら、クリーンでヘルシーでとにかく美味しいから、もうそれだけで十分でしょ。だからレモンタルトならレモン自体の味が良いことが前提になる」
プレゼンテーションも良いにはこしたことがないけれども、フレーバーと味を最重要視した田舎料理だね、と自らの料理を語るテオさん。香港には年に3、4回訪れて、お客さまの反応を見ながらメニューをブラッシュアップしていく予定だそう。
ということで記念写真も、やっぱり笑顔になりますね♪
今回香港で発掘した美味しい食材もたっぷり使った、山海の幸と太陽の恵みに満ちた地中海の味。やっぱり日本人にとってイタリアンって、もはや外国料理を超えた国民食的な存在ですから、「美味しいイタリアンがどうしても食べたい!」という気分になったとき、これは使える一軒です! 次回の訪問が楽しみになりました(レモンタルトが今すぐ食べたい、笑)。
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