2014年にランドマークにオープン以来、取材でもプライベートでも、何かとお世話になっているチャイナ・タン。香港ときどきマカオでも、常にアクセスが絶えない常連的存在です。2016年にはハーバーシティ店もオープンしています。
何と言っても最初に目を奪われるのが、上海灘の創業者として知られるデビッド・タン卿による、カラフルでエレガントなチャイナテイストのインテリア。
ランドマーク店では、赤を基調にした温かみのあるファブリック遣いと、繊細なアンティークランプに目を奪われます。
昼も夜も必ずオーダーしたい人気メニューの1つが、叉焼豚。最近はイベリコ豚を使っている店が多くなっていますが、総シェフのアルバート・オウさんによると、チャイナ・タンでは、日本の群馬産の高級豚を使うようになっているそう。
そう言えば、香港に来て、叉焼豚に使う豚の部位を最初に意識させられたのが、チャイナ・タンでした。脂がたっぷり載って柔らかいバラ肉、脂がすくなく肉がしっかりした腰肉の2種類がここでは使用されていて、好みで部位を指定したり、半々ずつ混ぜてもらうことも可能です。
もう一つ、部位の違いをはっきり意識させられるのが、人気の前菜のクラゲのマリネ。一般的には脚部分を使用することが多いものですが、チャイナ・タンでは、コリコリ度が高く食感が素晴らしい頭部を使用することが多いそう。
先日、香港のメディアを招待してのディナーに招待していただいたときには、5種類の前菜盛り合わせとして、クラゲの頭のマリネ、海老の紹興酒漬け、カエルの脚の揚げ物、チェリートマトのマリネ、海老ムースと梨を詰めたホタテ貝のフライが一皿に並びました。
そしてダブルボイルドスープは、香港で人気の高い、ココナッツの殻をスープ皿にしたタイプ。ココナッツのジュースもしっかり入った中に、質の高いチキンと干しアワビのエキスがたっぷりとスープに溶け込んでいて、食べれば食べるほど、体が温まって汗が流れてくるような、引きかかりの風邪であれば治ってしまいそうな、リッチな味わいです。
定番メニューが充実する一方、研究熱心なシェフのアルバートさんならではのクリエイティブなメニューにも驚かされました。
ロールキャベツと言うと、日本ではお馴染みの家庭料理。これを広東料理としてアレンジしたのが、トマトピューレに浸した繊細な一品です。透き通ったキャベツの中に、さまざまな食感の茸類が入っていることが目でも見えます。これに中国ブロッコリをドラゴンに似せる包丁技で生まれた鮮やかなグリーンを添えると、びっくりするほど華やかな一品になりました。
中国料理の無限の可能性を感じさせる麗しい一品料理です。
会食の途中で、シェフがゲストの目の前で腕を振るってくれるというのは、特別な気分を味わえるので嬉しいですよね。
この日は黒トリュフとシーソルトで包み焼きにした若鶏を、アルバート・シェフが用意してくれました。一斉に写真タイムになりました。やっぱり。
他には見事な和牛の炒めものと、ヒラメのフィレ。
手刀削麺も素朴な食感と洗練された調理が混ざり合った美味しさ。避風塘料理と言って、銅鑼湾と湾仔の間のあたりにあった、台風時の漁師の避難所で出されたワイルドな料理が由来の辛いソースが使われていました。
昼の飲茶もいいですが、やっぱりじっくり本格的な一品を味わえるディナーは格別です。自分でオーダーすると、つい同じような安心株ばかり頼んでしまうので、とても新鮮なコース内容でした。