傑作バランスの流麗で端正な料理に恍惚とするBelonの夜

今年の「アジアのベストレストラン50」40位に初ランクインしたBelon!

2年前にオープンしたときには、フランスの人気シェフ、ヘンリー・ジェームズさんが率いていました。香港スタイルに当時書いた記事です→こちら

 

その後、ヘンリーさんがフランスに帰国し、取材時にナンバー2であるスーシェフとして活躍していたのが印象的だったダニエル・カルバートさんがエグゼクティブ・シェフに就任。とても若くて童顔ながら、料理への真摯な姿勢と芯の強さがにじみ出るダニエルさん、その頃から私の友人は「彼は若いけれども才能も情熱も桁違いで、10年後には世界のビッグシェフになるんじゃないかと思う、だから今からチェックしていてね」と言っていたことをよく覚えています。

彼女の言葉通り、メキメキと才能を開花させ、水を得た魚のように大活躍中のダニエルさん。

彼の料理をいただくのは3回目(今までの2回、ブログを書き損なっていました、もったいない!)。今回はまったく別件でご縁があって、家族でぜひ食べに来てくださいとご招待を受けました。

ワクワクとBelonに足を踏み入れた日曜日の夜。お店はたちまち満員に。

幻想的な照明にスマートなインテリア。なぜかこの店に入って、この照明を見るたびに、昔大好きだったヴォリス・ヴィアンの小説「うたかたの日々」が思い浮かぶのです。

さてさて、この日はダニエルさんにメニューはおまかせ! アミューズとして出てきた、このさり気ない一品。イギリス出身のダニエルさんが、イギリスにあるWelsh Rarebitというチーズトーストのようなカジュアルスナックのレシピをアレンジしたものなのだそう!

基本の味はチーズとマスタード。しかしこのBelon版、なんと48ヶ月熟成のコンテチーズを使っているという超級アップグレード版。濃厚で深みのあって、ふわふわっと美味しい!ブラジルのスナックにも似てますね。

そしてこちらはBelon名物のサワードウパン! 2年前にダニエルさんが香港に来て以来、大切に毎日世話しているというサワードウ種には、大麦や味噌も入っているそうです。気候の変化に合わせて水の量を調整しています。定休日にもキッチンを訪れて必ずサワードウ種の面倒を見ているというダニエルさん。ダニエルさんが慈しんで大切に育てているベイビーとして知られています(笑)。

添えられているハムは18ヶ月もののVentreche de Bigorre 。バターは、英仏海峡に浮かぶチャンネル諸島ガーンジー島産。ガーンジーと言えば乳製品が世界的に有名で、イギリスにいたころはお馴染みでした。ジャージー島というのもおなじ諸島にあって、それが有名なジャージー種の牛の発祥地なわけです。風味豊かでうっとりとまろやか。

これはもう自分との戦い。この3点セットだけでも、いくらでも食べられてしまいますから、後から来るご馳走のためのスペースを維持するために必死に自制!

さーあ、いよいよここからが本番です・・・・・・!これはダニエルさんの名物メニューの一つ、オイスタータルタル。オイスターの独特の匂いが苦手という人でも、これは好きというケースが多いという秘密は、まず新鮮な福岡産恵比寿牡蠣を細切れにして、オイスタームース、シャロット、チャイブ、レモンジュースなどと混ぜ合わせていて、さまざまな食感と風味の中に少しだけ他より味が一歩前に出るぐらいの存在感でオイスターが登場するのです。Belonらしい、潔い味と食感の好バランス!

スプーンですくった写真を撮り忘れました!すいません!

お次にやってきたこのペア。さり気ない風を装いながら、よく見ると完璧な仕立てのシャツを身にまとっているジェントルマンというような一品なのです。とにかく家族全員、まず目が吸い寄せられたのが、このサンドイッチの断面! 手入れの行き届いた素晴らしい包丁を使って、まったくパンや具が潰されることなく、スパッと!

これが本気の食べ物だ、ということがこのビジュアルだけで息子達に伝わったようです。

これだけでその食べものの質の高さを醸し出すのだから、ああ、切り方って大事なんだなーと、改めて考えさせられました。私も料理するとき、大ざっぱな切り方するのを改めなければと別次元な反省も。

そしてもちろん。これはただのサンドイッチではありません。Belon自家製の、ポークとラム、クミン、フェンネルなどが入った北アフリカ風メルゲスソーセージを薄切りトーストにはさんだもので、添えられているソースは、ケールジュースとパルメザンチーズが入った緑のサルサソース! メルゲスの脂肪分を緩和する酸味がここに生まれます。

あっさりしているようで、どの食材もしっかり風味が強くてパンチが効いていて、それをお互いの風味を中和し合ったり、高め合ったりするようにバランス良く組み合わされているので、するりと美味しく食べられる・・・・・・そんなところがBelonの人気の秘密なのかもしれません。

そしてやっぱり。テーブルを華やがせるのがこうしたスープやソースのサーブですね♪

この爽やかな一品は、ホワイトアスパラガスのスープ。アスパラガスの皮を剥いて、その皮でスープストックを作ったという冷製ポタージュになっています。この目の覚めるようなスッキリ感とフレッシュさ。ポイントは「アイスコールドにすること」とダニエルさん。そして真ん中にあしらわれたグリンピースの美味しさにも目を見張りました。ここで異常事態発生。ふだんグリンピースが嫌いの次男が、迷いもなく、パクパクと口に入れているではないですか。いつもは、何でもまず口に入れてから「これなーに?」と聞いてくる長男と違って、食べ物に関しては慎重でなかなか口に入れない次男が!

今まで食べた数品で、もうこの店は次元が違うので、考える必要がなくて、とりあえず食べちゃってOKという深い信頼を育んだようでした(笑)。

ちなみにこのグリーンピースは香港のローカル野菜なのだそう。素晴らしいの一言。

ポークとピスタチオの自家製テリーヌ! またこれが美しい断面と完璧なる味のハーモニー <3

こちらもまた感動の一品、靴みたいなパスタという意味のScarpinoccのには、ポレンタをイメージしたというバジルピューレがくるまれています。卵を多めに使って出したというパスタのしっかりした歯ごたえと絶妙なる茹で具合、熊本産のフルーツトマトを使った濃厚ソースにブラッタチーズ。いろいろな食材のフレッシュさとビタミンで、食べたときに目がパキッと覚める感覚・・・・・・最後の一滴まで食べ尽くしました!

さあ、いよいよ本日の大トリ・・・・・・香港でいちばん美味しいローストチキンと挙げるフーディが多い、ベロン名物・・・・・・来ましたよ!!!

テーブルに置かれた姿はこんな風。皮からうっすら透けている緑はほうれん草なのです。会いたかったよ♪

きれいに切り分けられて再び運ばれてきたチキン、ほうれん草とチキンレバーを中に詰めて焼くそうです。

もう、これが・・・・・・柔らかーく、ジューシーで、肉の奥から美味しさをすべて引っ張り出しながら再び封じ込めたような、これぞチキン!という、あまりの程よい焼き具合。家族全員、目がぎらぎら(笑)。いや、いったいこの美味しさは、どうやって?何が秘密?何で、何で? どこのレストランでも家庭でも作られる、いちばんシンプルかもしれない料理なのに、明らかに違うこの美味しさは??? 今度ダニエルに会ったら、秘密を教えてもらおう!と身構え、「さー今日は教えてもらおうじゃないの」と迫る香港在住ジャーナリスト。

「え?別に普通に焼いているだけだよ、オーブンで200℃」えー? じゃあチキン自体が特別な?フランスのすごい養鶏場から来たとか?「これ、香港地元の三黄鶏使ってるんだ」・・・・・・私の突っ込みが足りませんでした、すいません(笑)

チキンと一緒にやってきたのは、フランスの伝統的蒸し料理、プティ・ポワ・ア・ラ・フランセーズ! ベーコン、ローメインレタス、ポテト、グリンピースがまたきれいに細かく刻まれて、バターやレモンジュース、塩であっさり軽く味付けされています。またこれが、スッキリ、シャッキリ、スパッ!(擬音が今日は多い、笑)とポイントを付いた美味しさ。そしてお腹にも優しく。幸せな味。

そう言えば、この日は私達はシャンパン、息子達はジュースを飲んでいました。またこのマンダリンジュース、とてつもなく美味しくて、長男ご機嫌。

楽しいディナーもそろそろ終わりに近づいてきました。トキメキのデザートタイム。まずはイチジクジャムを添えたサクサクと軽いミルフィーユ!たまりません。

これもダニエルさんの名物デザートであるストロベリータルト! 美しく薄くスライスされているのは、香港で大人気のあまおう。あまおうならではの独特の瑞々しさがそのまま残されていて、カモマイルのフローラルな香りや、ホワイトチョコレートの甘さ、シャンパンゼリーの気品が完璧なハーモニー!

いや~圧巻でございました。席に来てくれたダニエルさんと最後に記念写真! 誰ですか、どれが息子だか分からないって言っている人は(笑)。若々しい料理の鉄人、頼もしい限りです!

離れがたい、うたかたの宴を後にしました。

後日、ダニエルさんに会ったときに「そう言えば、ハッピーパラダイスでメイに取材したとき、ハッピーパラダイスの方向性は大班楼×Belonで、Belonの高い調理技術をリスペクトしていて、特にチキンの焼き具合、温度調節など、Belonのチキンからインスピレーションをもらったって言ってたよ。あそこの三黄鶏の料理、ものすごく美味しいよ」と伝えたら、「えー?そんなこと、メイから全然聞いたことなかったよ、そうだったんだ、それは嬉しいな」と大喜び。まだちゃんとハッピーパラダイスで食べる機会がなくて、じゃあそのチキン料理、食べてみるね、と嬉しそうにしていました。

案外、こんな感じで、お互いリスペクトしているシェフ同士でも、改めてそんな話をじっくりする機会ってあまりないのかもしれません。せめて私が間に入ったら、あんなこと言ってたよ(←いい話限定で、笑)って伝えるようにしようと思いました。

私も住んでいたことのあるイギリスのサリー州出身のダニエルさん。料理の道に進んでからはフレンチ一筋。「Belon自体はフレンチを強く意識しているわけではないんだけど、僕はとにかくフレンチの高度な調理技術とこだわりがとても好きで、それをふんだんに生かしているのがBelonなんだ」。

研究熱心な彼。どの料理も、最高の美味しさを正確に毎回再現できるように、試行錯誤やテストを繰り返し、これぞ!というテクニックを確立し、何もかも納得の行く形で手作りし、最高の美味しさが出るように温度管理や調理のタイミングに配慮し、サーブの直前に調理するものも多数なのだそうです。

お皿だってほとんどが真っ白で、決して派手に盛りつけを飾り立てたりしていないのに、思い切りのよい完璧な断面など、見ただけで美味しいに決まっていると口に入れる前から確信できる絶対的安定感、一口ごとににじみ出る正確性が心地よく美しいというBelonの料理。幾何学模様がスマートでエレガントなのと似た感覚なのかもしれません。

ファインダイニングの楽しさを改めて実感する夜でした。

過去に行ったときの凄い料理も(鳩も傑作なんです)埋もれさせないで、またご紹介しますね!

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