現代書道家、馮明秋さんのアトリエ訪問




香港に暮らす醍醐味だな~と思うのが、小さな街にぎゅぎゅっと世界中の突き抜けたような面白い人が集まってくるので、とても簡単に濃密な出会いがあるということ。

先日も素敵な出会いがありました。

久しぶりにLiang Yi Museumを訪れたとき、そこでキュレーターやPRを担当しているボニーさんとランチをすることに。「もう一人お友だちが来るので紹介するわ」と出会ったのが、ただいま自分のジュエリーブランドを準備中のインさん。

3人で話していると国籍も育った場所も違うのに、何となく家族の雰囲気やら何やら共通点が多くてすっかり盛り上がっていました。

そこでふと、私の実家が古いハンコ屋だという話になり、びっくりしたのがインさん。旦那様が篆刻にも情熱を抱く書道家で、ニューヨークのメトロポリタン美術館から依頼されて書いた書が収蔵されているのだとか! そもそも、ボニーさんとインさんが友だちになったのも、Liang Yi Museumで開催されたセミナーに、その旦那様、馮明秋さんがゲストスピーカーとして招かれたのがきっかけだったそう。

後日、旦那様に東京の老舗のハンコ屋の娘さん=私の話をしたら、ぜひ遊びに来てもらいなさいという話になったとかで、西営盤の自宅兼アトリエにおじゃましたのです。何しろ世の中でハンコと関わりのある人が周りにいることなんて滅多にないですからね(笑)

最初はこうやって篆刻を見せていただいているうちに、「書も見たい?」と聞かれまして、もちろんぜひぜひ!という話になり。

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こうやってとっておきの書をあしらった巻き軸を、一点ずつ作者自らかけて見せてくださったのです!! そしてかける順番も、時系列に近く、だんだん書が発展していく流れが分かるように見せてくださいました。なんたる贅沢な時間。

自由奔放に書体を考案する馮さん。これは書を始めた初期の作品なのだそうで、「一番普通」とのこと。えーそうなの?と言っているうちに、すぐその意味が分かってきました。

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いきなり次はこれ。すべて漢字なのです。線香花火の光のような線と、パチパチと音が鳴るようなリズムがあって、心を動かされます。

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どんどん見せてくれる書は、とてもグラフィカル。文字の集まりが図柄のようにも見えてきます。

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上の方に鈴なりになった文字がぱらり、ぱらりと落ちていくのです。何となく音が聞こえてくるような気がします。

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一瞬、私の乱視が進んだのか!と思ったら、そのような効果を出すために筆の先を割って一度に書いているそう!

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馮さんの書は音楽的で躍動的。私の大好きなミロとかカンディンスキーの絵を思い出させます。

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墨の滲みを生かした書!

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墨と水と筆と紙と印だけで、いろいろな世界が広がります。

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何十年かの間に書かれている作品群なので、いろいろな実験があったり、作風の変化もあります。黒と白に分かれたこの画面。黒の地の中にも文字が描かれています。

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ご自分で書かれた詩を題材にすることが多い中、これはなんと、一、二、三、四・・・・・・という数字の中国語なのです。

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さまざまな工夫をこらしつつも、墨と水だけで作りあげている技法は変わりません。この白い輪も紙の地の色が出ているのだそうです。鬼神佛魔・・・・・・横で説明してくれているにこやかな馮さんが繰り出したとは思えない、陽気さと闇を同時に感じさせる書です。

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曇りガラスの向こうに煙ったように透ける文字。

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パンドラの箱から飛び出すような文字たち。

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漢字って本当に造形として美しく、しかも1つ1つに意味があるからなのか、ものすごい力強さもあって、ずきずきと心に文字が打ち込まれてくるような気持ちになります。

漢字の意味も形も知らない西洋人には、これがまた別の意味でミステリアスに見えつつ、完成された文字が持つ力にも見せられるのか、ファンがとても多いそう。

とっても仲良しで素敵な芸術家カップルの馮さんとインさん。

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でもこれじゃ普通でつまんないね、何かしようって次のポーズはこれ(笑)

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えーーーーー(笑) やっぱり明るい笑顔に闇が潜んでいるのか(笑)

 

そして途中から、「絶対これはどこかで見たことがある」とたまらない既視感を覚えていたところで、その謎はすぐに解けました。

そう、それはマンダリン・オリエンタル香港の隠れ家ダイニング、Krug Roomで使われているお皿! Krug Roomのために特注で書かれた馮さんの作品があしらわれていたのです。

自分ではこのお皿の写真を撮っていなかったので、マンダリン・オリエンタル香港の広報さんに聞いてみたら、この写真をくださいました!!!

 

 

Kobe Beef - emailable

毎日のように偶然の出会いや思わぬ縁が繋がる世間の狭い香港で、またしても鳥肌が立った瞬間でした。

香港暮らしは日々、刺激でいっぱいです(笑)




 

 

 

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